当院呼吸器診療における3次元画像解析システムボリュームアナライザー SYNAPSE VINCENTの導入について

近年、放射線画像検査の進歩によって、CT、MRIなどの画像による病変の診断精度が飛躍的に向上してきています。それによって呼吸器疾患においても、胸部CTによる肺癌の早期発見が増えてきています。
放射線画像検査は病変の診断だけではなく、内科または外科的治療や、内視鏡またはカテーテルなどの検査の補助として必要かつ有用な検査です。一方で、従来の2次元画像においては、被検者個々の複雑な解剖の立体的構造の把握が困難な場合があります。特に、呼吸器領域における臓器、つまり気管支や肺の血管の走行は、非常に複雑で、さらに分岐構造に個人差を認めることが少なくありません。そこで、CT画像を3次元画像解析システムによって構築した3次元画像が非常に有用となります。
当施設では、2018年5月より最新かつ最先端の3次元画像解析システムSYNAPSE VINCENTを導入し、気管支鏡下肺生検(TBLB)や肺癌手術(肺葉切除術または区域切除)を行う際には全症例3次元画像解析システムによる画像構築を行っています。

実際に当院で3次元画像解析システムの気管支鏡シミュレータと肺切除解析を用いて検査または治療を施行した症例を提示します。

1. 気管支鏡シミュレータ

あらかじめ胸部CTより気管支鏡シミュレータで作成したナビゲーション画像を見ながら、ナビゲーションの矢印に従って気管支内腔に挿入した気管支鏡を進めていきます。イメージとしては「カーナビゲーション」と似ています。 上記画像は左右の気管分岐部になり、右気管支の方向にナビゲーションは指示しています

上記画像は中葉支と下葉支の分岐部でナビゲーションは中葉の方向を指示しています。

*生検鉗子の画像はOLYMPUSのHPより拝借いたしました

上記画像はさらにその先の画像で、気管支の内腔の径が気管支鏡の径より小さいため、気管支鏡はこれより先には進められないため、ここからは生検鉗子を挿入し行きます。

3次元画像ではその先の気管支内腔の画像が示されており、黄色く示された病変までの経路が3次元画像で確認できます。この画像を参考にして生検鉗子を進めていき、腫瘍組織を採取します。
実際に、生検鉗子の先端は腫瘍が存在する気管支に挿入することができ、腫瘍組織を採取して確定診断に至りました。

 2. 肺切除解析

左図のCT画像にて約1cmの腫瘍を認めます。早期小型肺癌の診断にて手術の方向となりましたが、患者の呼吸機能、全身状態、腫瘍が1cmと小型であることを考慮し、根治性が損なわれず肺を温存できる区域切除術を行う方向となりました。
それに先立ち、3次元画像を構築しました(右図)。左の通常のCT画像と異なり、3次元画像にすることで気管支、肺動脈、肺静脈が明確に描出されます。

構築された画像は、3次元構造であるため当然360度、どの方向にも回転してみることが可能です。区域間や血管の分岐をわかりやすく見るために、左側方を正面にした画像で示します。気管支、肺動脈、肺静脈の走行がわかりやすくするように、それぞれを分けて表示することも可能です。肺区域・気管支の3次元画像によって、腫瘍が存在する区域(舌区域:左上葉の下半分の肺区域)が明示されており、おおよその肺区域切除のイメージをつかむことができます。肺動脈、肺静脈の3次元画像も血管の走行が鮮明に描出されており、術前に切離する血管と残す血管をイメージすることができるため、高度な技術が必要とする胸腔鏡手術をより安全かつ的確に行うことが可能となります。

検査料につきましては、これらの3次元画像は通常の胸部CTのデータをもとに画像を構築するため通常の胸部CTと同額となります。
撮影方法についてもほぼ通常のCTと同じで放射線被爆量が特に増えるなどといった心配はなく、しいて言えば肺血管の3次元画像を構築するために造影剤の投与するタイミングや速度が通常の造影CTと少し異なる程度です。

当院では安全かつ最先端の医療を皆様に提供できるよう常に医療機器を更新し、更に医師をはじめ医療スタッフ共々、最新かつ高度な医療技術を習得すべく日々励んでおります。