近赤外線診断と近赤外線治療(臨床研究)を開始致しました。

認知症、うつ病等で前頭葉機能が低下します。
最近、脳機能をリアルタイムに評価する方法として、非侵襲的な近赤外分光法(NIRS)が開発され、医療の現場で使われています(下図)。前頭部に照射した近赤外線は前頭葉に到達し、脳血流量を増加させ、神経症状を改善することが報告されました。

島津製作所


近赤外線誘発機能的MRI検査
低出力近赤外線照射誘発機能的fMRI検査で、前頭葉機能の評価と、前頭葉賦活法を行います。基本的に保険診療の頭部MRIの適応の範囲内で行う検査です。高磁場MRI室に設置した810 nm CW diode laser装置をもとにして、非磁性体で作成した7mの光ファイバーを通して、被験者の前額部に近赤外線を照射し、照射前、照射中の信号変化を測定しfMRIを撮像します(下図)。近赤外線は温熱効果が少なく、米国FDAとANSIで定められた安全基準の320 mW/cm2より、はるかに少ないエネルギー密度で照射し、皮膚の熱感も起こさないレベルです。

 Nawashiro H, et al:Brain Stimulation (2017) Nov-Dec;10(6):1136-113

遷延性意識障害に近赤外線治療を行った症例の提示 【症例】40歳男性 交通外傷で、受傷。 昏睡状態で搬送され、急性硬膜下血腫、脳挫傷と診断された。開頭血腫除去・外減圧術で救命した。 しかし、8ヶ月以上、四肢自動運動無く、開眼するも追視なく、従命が全く取れない状態が持続した。 ご家族の同意を得て、前額部にLED(出力:13mW x 23 = 299mW)による近赤外光治療を朝夕30分間2回、73日間施行した。 治療後、照射部位の頭皮にトラブルは無く、左上肢の自動運動、合目的運動が出現し、前頭葉脳血流の有意な増加を認めた。


Nawashiro H, Wada K, Nakai K, and Sato S: Photomed. Laser. Surg. 30 (2012) 231.

関連論文

認知症、前頭葉機能低下、うつ状態
に対する近赤外線診断と近赤外線治療について 低出力近赤外線照射誘発fMRIを実施し、前頭葉機能を評価、その後、LEDによる前頭葉賦活を行います。 赤外線撮影用に市販されているL-Light(LED Light-emitting diode 23個の集合体)(出力:13mW x 23 = 299mW 波長760-940nm(ピーク値:850nm)を用いて、患者さんの前額部に朝夕2回、15分間光を当てます。このエネルギーレベルの近赤外は温熱効果が少なく過高熱を惹起する危険性はなく、皮膚の熱傷も起こしません。治療の開始前後でNIRSとfunctional MRIと高次脳機能を評価します。

前頭葉【ぜんとうよう】とは
前頭葉は思考・決断・運動・創造司どる最高司令塔と考えられています。
意欲ややる気を高めたり、頭に思い浮かべたことを行動にうつしたりする働きがあります。
感情をコントロールするのも、決めたことをやり遂げるのも前頭葉の働きです。
人間らしい行動をとれるのは他の動物と比べて前頭葉が発達しているからです。

「前頭葉の働き」
・意欲を高める
・思考する
・実行力
・面倒なことができる
・コミュニケーションをとる
・集中する
・計画を立てる
・感動する
・決断する
・分析する
・運動する
・意思決定をする
・状況を理解をする
・感情のまま動かない、我慢する

所沢中央病院 脳神経外科 苗代 弘(ナワシロ)
毎週(火)、(水)午後、(金)午前