呼吸器診療における3次元画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」のご紹介

近年の医療現場では、CT・MRIから得られるボリュームデータを用いた3D画像解析が、画像診断や術前プランニングに広く活用されています。その適用範囲は頭頸部から体幹部、四肢にまで及びます。当院では医用画像3Dワークステーション「SYNAPSE VINCENT」を導入しており、最新版では富士フイルムのメディカルAI技術ブランド「REiLI」を基盤としたディープラーニングによる自動臓器セグメンテーション機能を多数搭載しています。これにより、従来時間を要していた領域抽出や構造解析が効率化され、より精度の高い読影・治療計画が可能となっています。以下に、当院で実際に運用している検査・解析事例をご紹介いたします。

3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」
心臓、肝・胆・膵、腎、脳、肺、大腸などの統合3D解析アプリケーションで診療精度の向上に貢献

肺動静脈分離技術を単純CT画像にて実行可能

従来の血管抽出は造影CT画像を前提としており、造影剤の使用が必須でした。しかし、REiLIの深層学習を基盤とした臓器セグメンテーション技術により、単純CT画像からの血管抽出が可能となりました。「SYNAPSE VINCENT」Ver.6.7以降では、この技術が「肺切除解析」に実装されており、造影剤を使用せずに肺動静脈の分離が実行可能です。これにより、造影剤アレルギーや腎機能低下により造影剤が使用できない症例においても、術前シミュレーション画像の作成をサポートできるようになりました。

造影剤を使用して撮影した肺動静脈
造影剤を使用せず撮影した肺動静脈

上記のとおり、造影CT画像と比較しても遜色のない肺動静脈分離画像が得られることをご確認いただけると思います。今回ご紹介したように、VINCENTの新たな臓器セグメンテーション機能は、REiLIによる深層学習を応用することで、従来のマニュアル操作よりもはるかに効率的に3D画像を作成できます。さらに、VINCENTはサーバクライアント型での運用にも対応しており、電子カルテ端末など院内の各所から利用可能です。これにより、術前シミュレーション画像の作成に加えて、カンファレンスでの検討や術中の参照など、さまざまな臨床シーンにおいて柔軟に活用することができます。